ダムは水を汚す
       岩手日報論壇より 04/9/16

 簗川ダム(盛岡市)と津付ダム(住田町)の建設問題が本紙上で報道されている。私は国土交通省が計画した葛根田川の砂防ダム建設反対に三年前にかかわって以来、ダムや堰が水質に与える影響を調査する大学の研究グループをサポートしている。

 堰やダムを造ると河川の水生生物の生態にどのような影響を与えるのか。調査はそれらが川の石をふるい分けるメカニズムの解明から始まった。その後、堰やダムの上流、下流の水中の酸素量である溶存酸素の測定、流水の変化、水生生物の調査へと進んでいる。

 ダムや堪を造ると流水は静水になり、静水域が大きいダムほど水質が悪化する傾向にあるということが分かった。 溶け込んだ酸素は水中の有機物の分解、プランクトンなどの生物に消費される。この過程で静水域は水が濁り透明度が悪くなる。流水域でプラン久トンは発生しない。砂防ダムといえども流水を一定の時間、滞留させれば水質が変化する。これを陸水生態学で「腐水性が増す」という。

 農薬や合成洗剤にも原因があるが、それと相まって河川に造られた砂防ダム、利水・治水ダムが原因で清流性の水生生物の環境が激変しダムの多い河川・上流域の開発等で流水性生物群が川から消えていったのだ。

 清流で水中の食物連鎖一の上位にあり、それらを捕食する淡水魚の個体数が激変したのもこのためだ。渓流に造られた砂防ダムの静水域からガスが発生し、立っていられないほどの悪臭を放っている現場にいると怒りがわいてくる。特に大型ダムは腐水性を増すための 「汚水生産装置」と言っても過言ではない。

 河川には静水域を人工的に造る構造物を建造してはならない。たとえ「穴あきダム」として計画が変更された津付ダムでも、静水域が造られれば河川の水生生物の環境は激変するであろう。

 気水域、内水面の漁業に携わっている方たちは五感でこのことを体得している。すなわち建設反対の意見は理にかなっているのである。

 簗川ダムのように巨大なダムを造って上水源として利用することは、きれいな水を汚染させ、上水の利用者に「汚れた水をどうぞ」と言つているようなものだ。上水源とする場合は「流れダム」として静水域を可能な限りつくらない小規模なものにすべきだ。

 ダムにより流水から静水になると、生物群集も流水生物群集から静水生物群集になる。静水で発生したプランクトンの炭酸同化作用を受けて繋殖するのは光の届くところが限界である。その場所を変水層という。

 そこから下は死滅したプランクトンの分解で低酸素、あるいは無酸素になるが、地質中からマンガン等の金属イオンが発生するので上水には適さない。取水口の位置を工
夫しな廿ればならないか、溶存酸素の分布域は季節、富栄養化の進行によって生物相の変化があるため対応は難しい。

 ダム計画は陸水生態学の視点に立った湖水の変化、河川の生態系の変化の予測をしておく必要がある。こうした視点での事前調査・研究がされなければ、ダム建設の決定はしてはならない。
                                (雫石町 農業 49歳)





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