炎天無情
〜軒並み湖底さらす 岩手日報S48/7/27

 毎日のカラカラ天気に本県の水不足は深刻になるばかり。26日も盛岡では34度と平年より5.4度も高い、ことし最高の暑さとなった。連日の日照り続きに、さすがのダムも最近は、水位が下がり湖底が顔を出すところが増えてきた。特に花巻市の水ガメ″豊沢ダム紫波郡紫波町の山王海ダムの水不は深刻。豊沢ダムの水枯れは農業用水ばかりでなく生活用水にも深刻な影響を与えている。盛岡地方気象台の話によると二十八、九日ごろ一時雨の所もあるというが、雨量は期待できそうになく、悩みはますます深まるばかりだ。

加速度に縮む給水範囲
 同気象台の調べによると、六月一日から今月二十六日までの県内の雨量は、下閉伊郡岩泉町、普代村と宮古地方を除いていずれも平年の半分以下。中でも花巻地方は平年の一三%、北上地方は二一%、盛岡、紫波地方は二六%しか降っていない。
日照りでカラカラ―水没前の橋も姿を現わした湯田ダム

 このため水不足は深刻になる一方。特に花巻、紫波地方が深刻になっている。戦後、県内には各地に続々ダムが建設された。かんがい、発電、治水とダムによって目的は違うが、ダムによって流域は大いに潤い、ダムの威力を見せつけてきた。

 だが、この各地のダムも、最近のカンカン照りにいささかお手上げの状態。中でもピンチなのば花巻市の豊沢ダムと紫波町の山王海ダム。

 豊沢ダムは、三十六年に完成した有効貯水量約二千三百十八万立方bのダムだが、二十六日現在四十三万一千dに減ってしまった。同ダムは花巻市内の五千三百fの水田と同市の約六千三百世帯、二万七千人の水ガメ″の働きをしている。同ダムでは例年七月、毎秒六d放水しているが、ことしは四分の一の一.四dしか放水できない。

 山王海ダムは、有効貯水量が九百五十三万立方bだが、現在は泥を含めて十万立方bぐらいしかない。例年だと今の時期は二百万から三百万立方bぐらいあるが、ことしは全くお手上げの状態。現在給水がストップしている。同ダムは紫波町、矢巾町、稗貫郡石鳥谷町の水田約四千四十fを潤してきたが、下流は全く水が届かない。

 岩手郡玉山村の岩洞ダムも、水量は平年の半分以下。有効貯水量は約四千六百三十万立方bで、平年だと四千二百万dぐらいの水があるが、ことしは半分以下の二千万dぐらいだという。県企業局岩洞第一発電所の話だと、現在毎秒七.四dを放水、発電と岩手山ろくのかんがいに利用しているが、発電、かんがいとも今のところなんとかなるという。しかし、秋口になってかんがい用水が不用になるころには貯水も底をつき、水不足が発電に影響してくるのではないか、と言っている。

 一方、今のところ比較的余裕のある和賀部湯田町の湯田ダム、胆沢郡胆沢町の石淵ダムなども節水を余儀なくされているが、湯田ダムは、八月十日ごろが限度。同ダムを支える和賀川からの流入量は、毎秒五トン弱まで落ち込み、平年の六分の一となっている。

 石渕ダムの現有水量は、245万立方bと有効貯水量の四分のー。同ダムの水源に頼っている水沢、胆沢地方は、農業用水、飲料水の確保に一滴の水もムダにできないと関係機関は躍起。

 胆沢平野土地改良区は、胆沢町若柳の放水地から円筒分水を経て、幹線用水路で水を分けていたが、同郡前沢町白山、上野原地区、胆沢町外浦地区など末端まで行きわたる水が不足、一時断水もあったため末端地区への計画放流でなんとかしのいでいる。高台地区では水田から一度落ちた水をポンプ揚水して使っている所もある。

 飲料水も同様苦しく、水沢市の高台地区など一部では、朝、夕は断水の所もあるが、市水道事業所では給水ストップは避けたいと言っている。

発電所も刻々危機
 県企業局の電気事業も各ダムの異常な貯水量不足から発電量が軒並みダウン、岩洞発電所を除いて最悪の記録を更新している。

 県営発電所は岩洞が第一、第二発電所と胆沢第二,仙人、四十四田の五発電所があるが、この中で最も状況の悪化しているのは仙人発電所だ。二十五日現在の状況は、発電能力が一日わずか二時間で、七月の発電目標1079万4千`hに対し、達成率は同日現在で11.3%にとどまっている。同発電所の場合、このままの状態が続けば、日量発電能力が千`h台に落ち込んでいるため、全面発電停止という事態は避けられても、月間目標に対する達成率は10%台にとどまりそうだ。
発電量を達成率からみると、仙人に次いでひどいのが三〇・九%の胆沢第2発電所、四七・七%の四十四田発電所になっており、五発電所全体では岩洞発電所が順調に一〇五・九%を堅持していることから数字上ではなんとか六四.九%に落ち着いている。しかし、この記録は電気事業開始以来の最大渇水年だった四十五年の記録をすべて更新、最悪の状態となっている。

































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