水確保へ窮余の策
70年までに5億7千万d開設
                   岩手日報S54/2/13
 県は、昭和七十年を見通した水需給計画を十二日までにまとめ、近く関係方面に通達する。それによると、生活用水、農業用水、工業用水を含む本県の水供給量は既に限界に達しており、@ダムを主体とした水資源の開発A水源地域対策など開発に当たっての条件整備B水の合理的利用―の三点を基本理念に、早急に水資源の開発を図らなければならない―としている。具体的には、七十年までに年間五億七千五百万dの新たな水″の開発が必要で、うち半分は今後県内の十八河川にダムを造って確保する。降水量の少ない本県にとってダムを中心とした水確保は窮余の策≠ニ言える。しかし、ダム建設は巨額の投資とともに、水没地権者への補償問題が絡み、今後十五、六年で十八河川全部にダムを整備するのは至難の業と言える。同計画は今後年次計画で実現に取り組むが水不足が慢性化している折、同計画の具体的推進に当たっては閣係方面で激しい論議が交わされよう。


巨費、論議は必死
 五十年を基準年とした需給状態は、五十年の需要量が年間三十億一千七百万dで生活用水が一億一千三百万d、農業用水が二七億六千七百万d、工業一億三千六百万d。この年間総需給要量は県庁ビルをマスにしてざっと四万杯にあたる。また、生活用水だけをとってみても、県民一人あたりの需要量は八十dになる。

 供給量は三十億五千万dで生活用水一億四千七百万d、農業用水二十七億六千七百万d、工業用水一億三千七百万d、生活工業用水にはわずかながら余裕があるが、農業用水はギリギリの状態。四八年や五三年夏のような渇水年には約三億dの農業用水が不足する。

 これに対し七十年は需要がそれぞれ約一億dずつ増え、生活用水二億四千六百万d、農業用水二十八億六千五百万d、工業用水二億富千七百万d。これらを合わせた総需要量は三十三億六千八百万dで、五十年に比べて十一.七%の伸び。

 このため同計画は、「渇水年でも対応できるよう、七億八千万dの手当てが必要」としている。うち、五十三年末までに二億五百万dは手当て済みで、残り五億七千五百万dを新たに開発しなければならない。

これら新規開発分はダムで二億六千dまかなうはか、河川自流や地下水、わき水の確保、水利改善によるムダ水″の再利用―を考えている。しかし、融雪ダムや地下ダムなど水不足地帯で試行されている案は、除外された。

 水資源確保の柱となるダムの建設候補河川は、八水系、十八河川。北上川上流圏が丹藤川、簗川、滝名川。同下流圏が葛丸川、稗貫川、北本内川、胆沢川、磐井川、砂鉄川、千厩川、相川。沿岸圏が大沢川、閉伊川、気仙川。県北圃が平糠川、新井田川、久慈川、有家川。県内の主要河川に「最低一基は水資源確保ダムが必要」というわけである。

 しかし、ダム建設は期本計画の段階から完成までには、最低十年はかかる。現在、盛岡市繋、岩手郡雫石町に建設中の御所ダムは貯水量約六千五百万dだが、総事業費は約四百七十五億円に及ぶ。また、久慈市の滝、盛岡市の綱取、和賀郡和賀町の入畑といった建設中の中型ダムにしても、総事業費は八十億〜百四十六億円と大きく膨らむ。

 このような状況から、今後十五、六年の間に二十近い多目的ダムを建設するという同計画は、机上の論″に終わりかねない危険性をはらむ。水不足が慢性化している本県にとって、「やむにやまれぬ」策だったとは言え、ダム水没者への補償問題は年々難しくなっていることもあり、計画通りの事業推進を図るためには行政側の踏んばり″が要求されよう。


























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