岩手日報社説 S53/8/1

きょう一日は国民に水を考えてもらうための「水の日」である。この日から一週間は「水の週間」であるが、猛暑続きの中に迎える「水の週間」なだけに例年と違った響きを持っている。県内でも一時的ではあるが、地域によっては水道道を断水しなければならなかったところもある。県北地方には畑作物に干害の影響が出ている。

 県農作物気象災害防止対策本部は、県北の畑作地帯を中心に被額面積は、五十七市町村約二万三千fに及んでいるとみている。県農作物気象災害防止対策本部は五十一年の冷害の際に冷害対策を看板に発足したが、その後名称を変えて今日まで存続している。しかし、一転して干害対策本部″の機能を果たさなければならないような事態を迎えようとは予想していなかったことであろう。

 現在はかんがい用水が発達して昔のような水騒動″は起こらないが、畑作物は警戒しなければならない。野菜などは特に注意が必要であるが、それには農家に対する細かい行政指導が大事である。農作物は水がなくては育たない。一般の生活も水がなくては成り立たないのである。

 将来は不足の事態も
 「水の日」と「水の週間」が設けられたのは昨年のことである。ねらいはわが国の水需要が生活水準の向上、経済進展などで著しく増大したのに対して、水資源の開発は次第に困難になってきているので、水資源の有限性、水の貴重さ、水資源開発の重要性に対する国民の関心を高め、理解を深める必要に迫られたからである。「水の週間」が八月上旬というのも、年間を通じて水の使用量が多く、関心も高まる時期ということからである。

 その点ではぴったりの週聞であり、ことしのように干天が続くと特に痛感させられる。国土庁は「水の日」に合わせて長期水需給計画を策定した。これまでは水の需給について国土庁の五十年調査に基づく中間的な想定や、ことしの建設白書に載った建設省試算があった。こんどの計画は三全総を基礎に水需給の長期的安定化を目標に策定したもので、初めての正式な需給展望 である。

 これによると五十年の総需要量は八百七十六億dだったが、六十年までの需要増加は二百四十七d。これに対して同期間の供給増加は本年度までに着手した開発施設だけでは二百十八億d、その後の新規計画分を含めると二百四十二億dに達するという。従って六十年における需給は既着手施設だけだと三十二億d、新設を含めても十五億d不足する。

 水の需給展望で大事なのは、全国的な動向もさることながら、地域的な需給バランスである。六十年の地域別水不足量は新設計画を含めても東北では二.二億d不足する。関東、北九州はその倍も不足するが、本県の水利用の見通しは第3次県勢発展計画で基準年次(四十八年度)の二十八億二千四百万dを五十五年鹿には三十二億六千三百万d、六十年度に三十七億六千九百万dになっている。県は企画調整課内に「水資源係」を設けて県内の水資源需給計画を取りまとめているが、果たして本県の水の事情は安心できるのであろうか。

 節水型社会の形成を
 行政としても徹底的に詰める必要がある。例えば県住宅供給公社が都南村湯沢に建設中の団地であるが、初めは盛岡から上水道を引き込む構想だったが、盛岡の水不足″が影響して矢巾町からもらい水″することになった。盛岡は飲料水の供給量が予想以上に低いとの見方も出てきており、その面から都市建設が制約を受けるとの予想も出ている。

 それにしても国土庁の計画で注意しなければならないのは、第一に需要の面で水利用の節約と合理化、第二には供給の面でダム建設を計画通り実施することが前提になっていることである。これは県政にとっても、県民にとっても大きな課題である。「水の日」が設けられたのもこれらの課題解決が難事業であるとの認識があってのことであろう。

 三全総の「定住圏」構想に沿って、国土庁の長期計画では水の需給に余裕ある地域に定住人口を誘導することも提唱している。これからは県内でも水の余裕ある地域に定住人口を誘導するような街つくり〃を進めなければなるまい。国土庁の総合的な需給対策内容は第一に水資源開発の計画的推進を挙げている。

 それに続いて「節水型社会の形成」「地域特性に応じた開発」「国土保全と自然環境保全」「水源地域の振興」「水資源の配分調整」などの項目がある。いずれも必要な対策であるが、基本的に目指さなければならないのは、節水型社会の形成であり水源地振興対策の確立であろう。













































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