60年の需給計画国土庁が警告
                       岩手日報S53/8/1

 国土庁は三十一日、昭和六十年と六十五年を目標にした「長期水需給計画」を発表したが、それによると関東臨海、近畿臨海、北九州の3地域は六十五年になっても水不足が続き、得に関東、北九州両地域の水資源は七十五年には完全に限界に達する。

 このため同型画は@水資源開発の計画的推進A節水の努力B水に余裕のある地域への人口定住の誘導―が今後の水需給対策の大きな課題だとしている。

 同計画によると、五十年当時に比べ、六十年の需要量は二百四十七億d、六十五年には三百二十六億d増え、供給量はそれぞれ二百四十二億d、三百四十億d増える。また水不足を生じる地域の不足量は六十年で十五億d、六十五年で九億dになる。

 五十年に比ペた六十年の河川水の需要増加量は都市用水の百四十一.四億d、農業用水の五十億dのほか、地下水を利用しているものを地盤沈下防止のため河川水に転換するのに二十一.九億d、渇水時には取水を中止することを条件に河川水を利用している河川不安定取水の安定化のために三十三.二億dの合計二百四十六.五億d。六十五年には三百二十六.二億dになる。

 これに対し、六十六年の需給増加量は、建設、農林、構成、通産四省が六十年完成を目標にしている四百三十四ダムが全部完成すれば、二百四十一.五億d、五十三年度着手済みの三百五十三ダムしか完成しなければ二百十七.九億dにとどまる。

 水が不足する地域の水量をまとめると、六十年までに四百三十四ダムが完成した場合でも、関東臨海の四・九億dを筆頭に北九州四.〇億d、東北二.二億d、南九州一.六億d、近畿内陸〇.九億d、同臨海〇.八億d、山陰〇.五億d、沖縄〇.三億dとなり八地域で計十五.二億dの水が不足する。

 六十五年までには計六百七十七ダムの建設が予定されているが、これが全部完成しても、六十五年時点で関東臨海で六.九億d、近畿臨海で一・一億d、北九州で一.〇億dが不足する。


 【国土庁が三十一日発表した長期水需給計画の要旨は次の通り。】

 【水需要】生活用水の年間需要量(給水量ベース)は昭和五十年の百十九億dが六十年、六十五年には百七十九億d、二百四億dになる。工業用水(同)は五十年の百七十三億dがそれぞれ二百四十三億d、二百七十四億dに、農業用水は五十年の五百七十億dが六百五十五d、七百億dになる見込み。

 これを取水量ベースでみると、総需要量は五十年の八百七十六億dが六十年には千六十八億d、六十五年には千百四十五億dとそれぞれ百九十一億d、二百六十九億d増加する。

 このほか渇水期には取水しない条件がついている、いわゆる河川水不安定取水量が三十三億d、地盤沈下防止のために地下水を河川水に転換する量が六十年には二十二億d、六十五年には二十四億dある。

 従って六十年、六十五年の水需要は五十年より二百四十七億d、三百二十六億d増える。

【水需給】ダムなどの水資源開発施設の建設が計画通り進めば、六十年の河川水の供給増加量は二百二十八億d、六十五年には三百二十二億dと見込まれる。一方、地下水供給量は六十年に十四億d、六十五年には十八億d増加の見込み。

 河川水、地下水を合わせた六十年の供給増加量は二百四十二億d、六十五年は三百四十dになると見込まれる。

 【水需給】
∇六十年、六十五年における水需給の見通し
 水不足が生じる地域における不足水量の年間総量は、五十三年度までに建設事業に着手している水資源開発施設だけが完成した場合、六十年には三十二億dになるが、未着手分も含め計画通り完成すれば、六十年は十五億d、六十五年は九億dが見込まれる。
 しかし五十年に不安定な水供給量が五十七億dあったことからすると、全般的な水需要は次第に改善れる。
 地域別にみると、六十年に依然とじて関東臨海、近畿臨海、北九州、沖縄など多くの地域で需給関係は不安定である。六十五年にも関東臨海、近畿臨海、北九州の三地域で不足する。時に福岡周辺、東京周辺、京阪神はより一層厳しいことが予想される。

∇超長期の展望
 わが国で利用の対象となり得る水量は年間二千三百億dだが、ダムなど水資源開発施設の建設可能性を考慮すると、利用の限界はその六、七〇%(約二千億d)。昭和七十五年の水需給を展望すると、水資源使用率は約四十%(五十年=全国平均二六%)に達すると予想される。とりわけ関東(七十五年予想=七四%)北九州(同七二%)の両地域は高水準となり、水資源の供給限界が顕在化する。

 【総合的な水需給対策の展開】
 長期的な観点に立った総合的な水需給対策を計画的に進めるとともに、相対的に水需給に余裕のある地域に人口を誘導するよう、定住構想を進める。
 重点事項は@水資源開発の計画的推進A節水型社会の形成、水利用の合理化B海水の淡水化、下水処理水の利用C水資源の開発、利用に当たっての国土、自然環境の保全D水資源地域対策E各用途における水供給の効率化、広域化、共同化、用途間における水資源の配分調整。

 【注】取水ベースは河川から浄水場に取水する量。冶水ペースは浄水場から家庭、工場へ送り出す量。





























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