文責者m.jによる簗川ダム研究
流水の正常な機能の維持(正常流量)は必要か?

簗川ダム利水計画の主目的
 盛岡市・矢巾町の利水事業の縮小、県企業局の買電撤退により、簗川ダム計画における利水事業のうち、最大の容量となったのは「流水の正常な機能の維持(正常流量)」です。

 第4回簗川流域懇談会配付資料「流水の正常な機能の維持(正常流量)」では正常流量の必要性を以下のように述べています。
1.流水の正常な機能の維持(正常流量)について
  河川には、河川の環境や利用の面から確保すべき流量があります。この量は、各河川ごとに、景観や動植物の保護等の必要量(維持流量)と、かんがい等の既得用水(水利流量)の必要量双方を満足する流量であり、正常流量とよんでいます。
  よって、流水の正常な機能の維持とは、渇水時においても、最低限この必要流量を川で保つことを意味し、正常流量は、低水の適正な河川管理を行うための、基準値となります。
 さらに、検討断面を以下のように示し、必要流量を水深で表しています。
検討断面
動植物の保護(漁業)または景観からの必要流量検討例(0k275付近:産卵場)


1/10渇水相当時                      維持流量確保時
水面幅11.7m、水深21cm流量0.55m/s   ⇒   水面幅15.7m、水深30cm流量1.31m/s 
 この簗川ダム事務所の説明によれば、0k275地点では必要な水深30cmを得るためには少なくとも1.31m/sは常時流れていなければならないことになります。

 しかし、これはダム事務所の勝手な言い分に過ぎません。上の検討断面は、簗川の中でも一番川幅が広くなっている区間です。そのうえ、河床が平たく掘られているため、このままの状態で水深を維持するには他の地点より多い流量が必要なのです。

渇水期間も簗川の一姿
 同じ資料によれば、簗川ではこれまで20年間で2回(平成1年と平成6年)1年のほぼ3分の1が維持流量に達していない年がありました。
 しかし、それが理由で魚が死に絶えたとか、水道が断水したなどということはありません。

 むしろ、1年のうち3分の1の期間でほんの少ししか流れないというのであれば、これは大昔から続いてきた簗川の一つの姿といっても良いのではないでしょうか。

発想の転換が迫られるとき
 国土交通省河川局HPにある「多自然型川づくり」によれば、
多自然型川づくりとは、本来の自然の川の状態に近い形で河川改修を行うもので、洪水等に十分耐えられることを前提に、植物や小動物に優しい環境を作ったり、自然の風景に馴染んだ川づくりをすることです。
とあります。

 「河床を平たくして洪水の流下をできるだけ速める」という考え方は、洪水を河川内だけに封じ込めようとしていた頃の、現在では時代遅れの治水理念といっても良いでしょう。

 簗川ダム事務所の言い分は「川幅が一番広い箇所でも十分な水位を保てるようにダムで渇水時も多く流れるように流量調節する」ですが、
 
下流地点も自然の川のように河床に深い所と浅い所の水深差を設けてやれば簡単に解決するのではないでしょうか。

11月21日の工事現場から
 昨年(平成17年)の11月に簗川橋下で行われた工事では、川幅を土嚢で狭めたため水深がかなり深くなっていました。


 早朝のまだ工事が開始される前に、川の様子を見てみました。

  
   水深は少なくとも50cmはあると思われます。ゆったりとした自然の川らしい姿が
  感じられないでしょうか。
   これが夏場であれば、泳ぐことも可能でしょうし、魚も泳ぎ回れそうです。
  
   朝日に映える姿は清々しい気分にさせてくれました。

 簗川流域懇談会では、地元委員から「下流では魚が全く見られなくなった」という意見がありました。しかし、工事によって偶然見ることができた姿は、簗川下流にも自然を再生する力があると思わせてくれるものでした。

川づくりの紹介例
 河川局HPで紹介される多自然型の改修例は、たとえ人工的な川でも発想の転換で自然らしさを取り戻せることを教えてくれます。

 ダム事務所がいう「流水の正常な機能の維持(正常流量)」も、簗川には全く必要ないといえます。いかがでしょうか?
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