文責m。j
<簗場・中村観測所資料から その2>
大きなピークをつくらない簗川上流(流域T)

−簗場・中村地点の流域面積は?−
 簗川流域の地図を見れば、根田茂川流域(流域2)は河道が長く奥行きがあるのに比べ、簗川上流域(流域1)の河道はかなり短いことがわかります。
 また、簗場流域と中村流域の面積を比べれば、簗場のほうがかなり広く奥行きもあり、雨が降ったときに簗場地点まで流下するのにも時間がかかることが予想されますが、その反対に中村流域は狭く、雨が降ったときには流出が速そうです。
 
 黒い川は簗川、青い川は支流根田茂川
流域T−赤の部分35.1km2、流域U−緑の部分82.1km2、
流域V−黄色の部分31.1km2
中村流域面積(赤の)19.1km2、簗場流域面積(緑の)64.9ku


−河道勾配も大きく違います− 
 岩神山を頂点とする流域1が、ダム地点まで急な流路を一気に下るような構造であるのに対し、毛無森を頂点とする流域2は中頃で勾配が緩やかになり、ちょうど簗場地点付近で流速が落ちることが予想されます。

 これらのことから、
「傾斜がきつく奥行きがないため降雨が河川への流出時にピークがまとまらない流域1」

「広く奥行きがある上流部からの流出が中流で一端速度をゆるめるため、大きなピークをつくりやすいがその分合流点までの流下に時間がかかる流域2」、

  という対照的な特徴を持っていることが考えられます。



−実測流量から−
 おもな降雨の簗場・中村両地点における流量とその比率を表にしました。

 

流域面積

H12/5/13

H13/9/11

H14/7/11

H16/7/17

H16/7/19 H16/9/21 H16/9/30

簗場(A)

64.9q2

69.2t/s

73.7t/s

248.9t/s

67.0t/s

77.1t/s 152.2t/s 83.0t/s

中村(B)

19.1q2

4.5t/s

4.5t/s

40.9t/s

7.1t/s

13.9t/s 24.4t/s 11.3t/s

比率(B/A)

29%

7%

6%

16%

11%

18% 16% 14%

 比較の目安として両地点の面積比を併記しましたが、中村のピークは簗場と比べ非常に小さいのがわかります。
 グラフにしたものを見れば、この傾向はさらに明確です。降雨の度にピークの山を形成する簗場に比べれば、中村の場合ピークは存在しないといっても良さそうなほど、微妙な増量に終始しています。
降雨資料一覧参照
また、中村(流域1)の場合河川への流出も速そうです。
中村ピークの速い降雨例

   

H13/7/31

H13/9/11

H14/7/11

H16/7/21

H16/9/21

中村ピーク時刻

23:00 23:00 17:00 22:00 4:00

簗場ピーク時刻

2:00 0:00 18:00 23:00 5:00

 中村の場合流量が小さいため、直前の降雨によって容易に流量が変化することが多く、ピーク形成時刻が他の観測点とまるで関連を持たない事例も多いようです。
 それを考慮しても、簗場と中村のピーク形成時刻には1時間以上の差があるようです。この時刻の差が根田茂・簗川の合流点にたどり着くまでにさらに広がります。
(中村→宇曽沢6.9km 簗場→宇曽沢9.9km+勾配の差)

 以上のことから、中村を有する流域1のピーク流量はさほど大きな数値とならず、根田茂川との合流点で急激な流量の増加はなさそうです。


−ところが簗川ダム計画では−
 簗川ダム計画では100年に1度の洪水の時、簗川上流と根田茂川支流の流量が合流して、ダム地点で580m3/sものピーク流量を形成することになっています。

根田茂川340m3/sと簗川上流280m3/sが大きなロスもなく合流し、
ダム地点で580m3/sのピーク流量を形成する。


                   昭和33年9月洪水流出計算(平成9年度計画書別冊資料より)

 
 簗川ダム計画の基本高水流量780m3/sは、流域2のピーク流量と、それに相応する流域1からの流量の増加が前提になっています。
 ところが、流域1の2/3の面積をしめる中村での観測開始からの既往最大流量は台風6号時の40.9m3/sであり、たとえ1/100確率年の雨が降ったとしても、277m3/sものピークを形成する可能性はなさそうです。

 この点から見ても基本高水流量780m3/sは過大であるといえます。



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