地元説明会における質疑応答
 QAは説明会参加者からの質問、Aは簗川ダム事務局からの回答。


第2回説明会  (8月29日中野地区活動センター)
管理用発電について
Q 発電についてですが、水力発電というのは温暖化対策として貢献するんじゃないですか。
A 東北電力に発電する単価ですが、安くないと買ってもらえず、採算が合わないと言うことで企業局は発電から撤退したわけですけど、県としましてはせっかくの落差のある施設なので、ダムの管理のための電力は自前で作ろうということで現在具体的な計画を検討しております。管理用発電はダム事業として補助事業として実施し、その余剰を道路等の照明に活用したいと考えております。
Q 水力発電500kmワットで最大2000kmワットというのはどのぐらいの量なんですか。今説明があったとおり、このkmワットでは少なすぎて売り物にならないのではないでしょうか。
A それでまあ、東北電力には売りません。県道盛岡〜大迫線のトンネルの照明等の施設に使う。発電をしないと東北電力から電気を買うわけですよね。買うよりは安く発電できるので、それを道路等の施設に使う。まあ、県の内部で河川管理者が道路管理者に安く電気を売るという考えで今計画しているところです。まだ決定はしていませんが。



超過洪水について
Q 百年に一回の雨が降ることを想定して計画を立てていることについて、まあ一応理解しました。しかし、異常気象によって百年に一回以上の大雨というのは今後かなり起こる可能性がある。貯水量を上回った場合、堤防の決壊ということが起こらないのか。
 以前、四十四田ダムで放流後北上川が増水して、橋の上まで水がかぶったという体験もあります。
 仙台市の名取川南部が今は盛岡市の中心街よりも立派な町になりましたが、そこから3〜4km先のダムの水が誤って放流されたんです。そうしたら30〜40cmもの水かさが町中を流れたわけです。えらい土砂とかが流れてきまして、大変な事態が起こったんですけど、いろいろ想定外のことであれば、そういうことまでも考えて行かなきゃならないんじゃないでしょうか。
A 仙台にあったようなダムからの放流で下流域が浸水するというのは、おそらくゲート等があって、それを開け始めたために一気に量が増えたというようなことだと思います。
 簗川ダムの場合は真ん中に穴があいているわけですね、徐々に増えていくと。ですから洪水調節に関しては実際急激に増えていくということはありません。
 川の水が増える割合よりも少ない割合で下流が増水していくというようなイメージになるかと思います。
 で、計画を上回る場合ですね、計画の洪水の場合780t/sの水に対して下流は340t/sに抑える計画になってますんで、この340t/sを超えないかぎりは下流は氾濫しないというような計画で作っています。
 ただし、平成14年の台風6号の時も340t/s程度だったんですが、あれは中州の影響とか水があたる角度等でですね、市で造っていた堤防の足下がえぐられたために崩れたというわけです。
 その時の災害復旧はコンクリート護岸をしておりますので、もう崩れることはないわけですけど、部分的にそういう構造物が壊れることが絶対ないとはいえないですが、基本的には川の断面は340t/s流れるように河川改修しております。
 ただし、計画を上回る洪水、バケツの上からばっと溢れるような洪水の場合はもうダムがないのと同じです。
 780t/sを上回る流量が来ますので、堤防も壊れるし氾濫も防げない。計画を上回る場合は、この計画の施設では防ぎようがないということでございます。
 したがいまして、県としましてはそういうふうに水が溢れる前に避難していただくような警報とかそういったことで、あとは避難場所を確保することで対応するとそういった考えでおります。

文責者から:
 近年の水害例からみても、大きな被害を出すのは堤防が決壊した場合であり堤防天端の越流だけでは大きな被害は出ません。⇒例:05年ハリケーン「カトリーヌ」によるニューオリンズの水害04年新潟水害における刈谷田川福井水害における足羽川。いずれも堤防決壊が被害を大きくしており、越流しただけではそれほど大きな被害になっていない。
 簗川の場合、下流800mの堤防は約4億円で破堤しない構造に強化できます。しかも、下流0〜1.5km区間はすでに780t/s以上の流下能力を保持しているので、堤防強化が実現すればダムの必要性はなくなります。




土砂災害対策について
Q 先ほど地図を見ていまして付け替え道路のそばに杉林がありましたね。ああいう杉林は土砂災害のもとなんです。杉は根っこ張りませんから、大雨が降るとみんな土砂と一緒に流れてしまう。
 だから10〜20mの幅の道路でもすぐ埋まってしまうんですね。地権者との交渉もあると思いますが、杉林を無くして雑木林にするという考え方も必要ではないでしょうか。
 今後治水対策に合わせて土砂対策も考えていかなければならんのじゃないか、そのような感想を持ちました。
A 基本的にはそういう崩れそうな土地を買収して対策を立てるということは難しいことです。
 ダム貯水池周辺には杉林はあまりないかと思っておりましたけど、下流の方にはあるいはあるかもしれません。
 実態を把握して今後どのように対応していくか検討していくということで、具体的なことはここでは申しかねます。
A 簗川とは直接関係ありませんけども、住居そばに山を抱える地区を対象に去年から説明会を開いています。
 その中の地区から、やはりある山が杉林だからそれが倒れればさらに災害が増幅するという話もあります。
 ただ、そういう急傾斜の伐採等でみなさんの財産を守るというのは、県に金がないということです。
 そういう箇所については、財産よりも人命を尊重し避難していただく、私達のイメージで言えばソフト面で対応ということです。
 その際、今逃げたらいいのかどうか感覚的にわからないといった場合の情報提供はしますよと、それで観測長と県と、まあ市の方がメインになるでしょうけど、避難勧告とかそういう命令を出すための対策を今から進めていかなければならないと考えております。
 県内でも何カ所か危険区域を指定して説明会を開催しております。
 危険区域ごとに3億とか4億とかかけるのではとても釣り合わないということで、宅地開発とかそういうものについては建てないほうがいいという注意をしたり、建てる場合は自分で守ってくださいとか、そういった上でなければ許可できないとかそういうことをやっております。
 杉林とかを行政が地権者に切ってくれとか、変わりに根が付く木を植えてくれとかそういうことなかなかできないものだから、まあ地区のみなさんもその辺のところ考えてくださいよと。
 今後みなさんのところともそのようなことでお会いすることもあるかもしれません。

文責者から:
 簗川ダム建設で国補助分を除いた岩手県の負担額は約230億円です。これだけの費用があれば、簗川流域の危険個所の補修には十分過ぎるでしょう。
 ダムに支出したら森林整備に出す金がなくなるというのであれば、ダムをやめてその分土砂対策・森林整備にお金を回すという選択もあるのではないでしょうか。
 昨今の日本で最も被害の大きいのは土砂災害であり、洪水対策は既に十分行き届いているといっても過言ではありません。(ただし、堤防強化は必要)
 国も含めて、災害対策の転換を図る時期に来ているとはいえないでしょうか。



ダム耐用年数について
Q ダムはどれくらい保つんでしょうか。100年に1回の雨ということであれば当然100年は保つものだとは思うんですけど。
A 計算上は80年という耐用年数になっておりますが、実際は維持管理等をきちっとすることで100年以上保つダムもあるようです。
 普通は100年保たせるという作り方はしない。
Q 補修しながらやっていくということですか。



2日間雨量について
Q 2日間で210mmですか、まあ48時間で見ていると思うんだけれども。
 テレビ等では1時間雨量が50mmとか言っているようですけれど、それに置き換えたらどのくらいなんですか。2日間雨量がよくわからないんですけれど。
A 210mm降って780t/s出るという雨の時はですね、1時間で50数mm、2時間で80数mmという雨で計算しております。
 実はこの2週間ぐらい前、綱取ダムの上流の方の地点で1時間55mm、2時間で96mmという雨が降ったそうで、だいたいそのぐらいの雨が流域全体に降ると780t/sの流量が出てくるということです。
 まあ、局所的に降ってもその通りには出てこないんですが、流域全体に降った場合は可能性が全くないわけではない。

文責者から:
 簗川ダム計画では48時間雨量は採用しておらず、あくまで2日間の雨量で計画しており、これが実測流量からかけ離れた基本高水流量780t/sの原因の一部になっています。
 


ダムの大きさについて
Qよそのダムで言えばどのくらいの大きさなんですか。例えばすぐ隣の中津川の上流のダム、あれより大きいんですか小さいんですか。
Aダム自体は大きいです。
Q貯水量はどうなんですか。
A貯水容量も面積も綱取ダムのほうが大きいです。簗川かな。

(傍聴者から)簗川は県営ダムで一番大きいでしょう。



第3回説明会  (8月31日 簗川ダム建設事務所)

ダム堆砂について
Q ダムに堆積する土砂ですが、今四十四田ダムではどれくらいですか、築50年ぐらいですか。
A 詳しいデータは今持っていないですけれど、計画堆砂容量の7割8割程のようです。現在建設省さんでその対策について協議しています。
Q それで、ダムは100年もたてば平常の堆積土砂の処理をしていないとダムがないのと同じだと伺った。堆積土砂の処理はどのようにしているのか。
A 堆砂容量というのがあるんですが、まあパンフレットに書いてございますが、土砂が貯まることについては最初から容量を持っています。これは100年分を見込んでいます。

文責者から:
 四十四田ダムは36年間で100年分の堆砂容量の93%に達しています。
http://www.iwate-np.co.jp/news/y2005/m01/d24/NippoNews_10.html )



流量配分について
Q ダムから下流の沢で多く降った場合は計算よりも多く流れることはないのでしょうか。
 例えばこの間の東安庭の堤防崩落ですよね、ああいうふうに下流になればなるほど、計算している流量よりも流れてくるんじゃないのかなと思うんですが。
A 下流の増水についても全て見込んでいます。
 ただし、ただしですよ。沢に鉄砲水みたいなのが流れて沢が決壊あるいは山手の斜面が崩れるとか、そういうものまではこのダムでは防げません。
 簗川本川の水に関しては沢からの水も計算上は入っています。

文責者から:
 ダムを造っても水害を全て無くすことはできないということを、ダム事務所自らが認めています。



正常流量の維持機能について
Q 簗川では平常時にはどれくらい流れるわけですか。いわゆる干上がらないかなということですが。
A 資料の中では不特定容量とか川の維持流量と言っていますが、河川の水位としては魚が生息するのに支障のない水深と言うことで川の一番深いところで30cmは確保できるような形で想定しています。
 基準地点としてダム地点と簗川橋地点の2地点で30cmの水深を確保できる流量をダムから流してやるということです。
Q それは沢田浄水場の使っている分を含まないのですか。
A沢田浄水場で使ったあとに残る水の量をダムから補うということです。

文責者から:
 昭和60年~平成15年の葛西橋地点水位流量年表(説明では簗川橋地点)によれば、河床低下により水位計測が正確でなかった時期を除き水深30cm以下になったことはありません。
 注:水位流量年表とは、毎日の平均流量を年表に整理したものです。

















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