やっぱりダム要らないジャン!
現況想定氾濫図の検証
第6回流域懇談会(05/11/7)では、以前より要望していた現況河川での想定氾濫図が
公開されました。
現況河川における流下能力図と想定氾濫区域図
新たな氾濫区域では、私たちが指摘した、「下流右岸には堤防など存在しないのに、堤防
決壊を仮定して氾濫想定を行った」を、事実上容認した形となりました。
(これについて岩手県河川課は河川改修の成果だと説明し、明確なコメントをしていません)
氾濫区域の縮小により、想定被害額は大幅に減額するため、費用対効果(ダム建設費と
被害防止額との比較)では、ダムのほうが高額になることが予想されます。(ダムを造ったら
損をするということです。) (パブリックコメントでの岩手県の回答)
また、代替案との比較では、これまで「河川改修単独案よりダムが安い」としていましたが、河川
改修の必要な区間がかなり短くなっており、河川改修単独案のほうが有利(安価)になったと思わ
れます。(これについても県はコメントせず。)
先日の大規模公共事業評価専門委員会(05/11/18)で河川課は新たに費用便益計算をするつも
りはないと発言していますが、県税を運用するものの態度としてこれは許されるものではありません。
この発言に見いだされるものは、より経済的・効果的な治水を追求する姿勢ではなく、
なにがなんでもダムを造りたいというしがらみ行政の姿です。
想定氾濫区域の検証(下流)
下の図は現況(左)と以前(右の青い部分)の想定氾濫区域ですが、氾濫面積の激減は明白です。
具体的な検証を以下に述べます。
A地点
最も顕著な部分です。以前は国道4号線を越流し神子田方面にまで及ぶという想定でした。
ここが変わった最も大きな理由は、「堤防のない地点での破堤」想定を改めたためと思われます。
B地点
下流左岸の氾濫も、以前は葛西橋(0k925m)の付近から氾濫するとしていましたが、ここも今では
地上げが施されており堤防は存在しません。
今回の想定では「北上川合流点から550mのあたりで破堤」するという想定に変更されましたが、
この地点の堤防は十分な流下能力が備わっており、破堤さえしなければ左岸は全く氾濫しません。
堤防があっても考慮されない治水経済調査マニュアルの問題点
H15年測量550m地点横断図 |
C地点
北上川合流点そばの右岸は自動車教習所の敷地であり、以前県は「堤外民地」と説明し、氾濫を
許容する場所としていましたが、今回の想定では「河川区域ではない」としています。
自動車教習所は河川区域ではないのか?のページへ
D地点
この地点の氾濫面積はなぜか以前より広くなっています。河川改修によってこのあたりの河床は掘削され
前より低くなっているため、流下能力が向上しているはずです。
また、左岸は田や建設資材置き場などの低地ですので、氾濫は右岸より左岸に向かうはずです。
右岸1km地点付近の氾濫想定の疑問点のページへ
想定氾濫区域の検証(中上流)
中上流での最も大きな変化は、以前(下)の想定のように氾濫区域が連続しなくなったことです。
このため、河川改修が必要な区間は大幅に減縮したと考えられます。
EF地点
氾濫面積がかなりスリムになりました。特に地盤高が周囲より2m程高い工業団地(F地点)が
当然ながら氾濫区域から外れました。
GH地点
反対に面積が膨らんでいるところもありますが、その理由はわかりません。
県の説明では想定の手法は依然と変わらないとのことですので、架空のガラス堤防の手法などを
採用し、流下能力を低く見積もっていることも考えられます。
それでもまだ過大である可能性が・・・
大規模公共事業評価専門委員会(05/11/18)では、治水規模のベースとなる基本高水流量
の再検討が付帯意見となりました。
簗川ダムの基礎データ再度確認へ 事業は継続で結論 盛岡タイムス
これにより、簗川ダム計画では100年に1度起こると想定している計算流量毎秒780トンが
見直されることになります。(40年間の実測最大洪水は335トンでした。)
基本高水流量が仮に50トン下がっただけでも、想定氾濫区域はさらに縮小します。
公正な判断がなされた場合、氾濫区域が全くなくなってしまう、つまり「簗川にはこれ以上大きな
治水は必要ない」という結論に至る公算はかなり大きいでしょう。
ところで、盛岡市の洪水ハザードマップは訂正しないのでしょうか?
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